米沢富美子は1996年に日本物理学会の会長に選出され、その長い歴史の中で「日本初の女性会長」となった理論物理学者である。日本物理学会は、日本の物理学研究を代表する権威ある学術団体であり、そのトップに女性が就任したことは、日本の科学界における女性の地位向上を象徴する画期的な出来事であった。彼女は、アモルファス半導体や液体金属などの不規則系の電子状態を解明する「コヒーレント・ポテンシャル近似（CPA）理論」の発展に大きく貢献したことで、世界的に知られている。がんとの闘病など数々の困難を乗り越えながらも、常に情熱を持って研究と後進の指導にあたり、その功績はロレアル・ヘレナ・ルビンスタイン賞など、数々の賞によって讃えられている。まさしく物理学界における「日本一」の女性リーダーであった。