1930年（昭和5年）、香川県観音寺市に完成した豊稔池ダムは、日本最古の現存する石積式マルチプルアーチダムである。このダムは、複数のアーチを連ねて水圧を支える独特の構造を持ち、その美しい姿はヨーロッパの古城を彷彿とさせる。度重なる干ばつに苦しんだ地域住民たちが、自らの手で組合を結成し、延べ15万人の人海戦術によって築き上げたという歴史を持つ。地域住民の汗と情熱の結晶であり、その技術的価値と歴史的背景から、国の重要文化財にも指定されている。まさに日本一美しいと称されることもある、近代化遺産の至宝なのである。